Discussion about “JUST MY COLOR”

自由な発想で、eteにあたらしい一面を

Nouso（以下、N） 「今回の取り組みのスタートには、eteとしてあたらしい世界観を伝えたい思いがありました。岡﨑さんにディレクションをお願いしたのは、わたしたちが大切にしている遊び心をきっと素敵に表現してくださると思ったからです」

岡﨑真理子（以下、岡﨑） 「最近は現代美術の仕事が中心だったので、このようなオファーは新鮮でした。嬉しかったです」

N 「実は数年前、京都国立近代美術館でピピロッティ・リストの展覧会を観たのですが、展示のビジュアルがとても刺激的だったと記憶していて。特に惹かれたのが、その配色のセンス。当時は存じ上げませんでしたが、岡﨑さんがビジュアルをデザインされていたことを後々知り、どんな方なのか気になってしまって……（笑）。長嶋りかこさんのデザイン事務所にいらっしゃったことや、雑誌『GINZA』のデザインに携わられていたことなど、eteの表現と共通点が多いように感じて、ご一緒したい気持ちが強くなりました」

ーー 冬コレクションのテーマは”JUST MY COLOR”。配色のセンスは決め手として大きかったのでしょうか？

N 「そうですね。オファーさせていただく段階ですでに意識していたと思います。”JUST MY COLOR”に込めたのは、『ヒト・モノ・コトをさまざまな色と捉え、その積み重ねがいまのわたしを作り、さらにアップデートしていく』ことの肯定です。単純な色使いのうつくしさだけではなく、岡﨑さんとならさらに何かあたらしいものが生まれるんじゃないかという直感的な面も多分にあったと思います」

岡﨑 「最初のミーティングで、”JUST MY COLOR”のほかに今季のキーアイテムでもあるフローライトについてや、“ミラー”がキーマテリアルになっていることなど、コレクションを形成するさまざまな要素をお聞きして。それ以降、細かい部分の出し戻しはあれど基本的には自由に提案させていただきました」

N 「これまでのビジュアルは、コンセプト立案から撮影に関する細かなセッティングまでこだわっていました。ですが、今回は岡﨑さんの発想をメインにして、自由に手がけていただきたくて。そうすることで、わたしたちだけでは行きつかないであろう発想がかたちになるのではと感じたんです」

ビジュアルを通して、着用イメージの幅を広げたい

ーー 岡﨑さんの目に、eteはどう映りましたか？

岡﨑 「これまでのビジュアルや着用イメージを見て、自分なりにeteというブランドをイメージしていたんです。でも実際にジュエリーを目にしたとき、たしかに繊細な作りだけど、パズルリングやフローピアスなどボリューム感のあるジュエリーもあって、男性が身に着けても似合いそうなものが実は多いブランドなのだと認識を新たにしました」

N 「実はわたしたちとしても、『華奢なジュエリーが揃う』『フェミニンで可愛らしい』といったイメージを抱かれることが多いように感じてきましたが、実際はそうとも限らず。年齢や、性別を問わず、さまざまな方にeteのジュエリーを着用してもらいたいという想いで提案しています。今回のビジュアルには中性的な男性モデルも起用していますよね」

岡﨑 「そうなんです。今回の制作には、雑誌『GINZA』のアートディレクターをしていた本田千尋さんにも参加してもらいました。本田さんとわたしのなかで、モデルから連想されるeteの着用イメージの幅を広げるビジュアルにしたいという構想は初期段階からありました」

N 「わたしたちの目にも、人物像を広げるビジュアルがとても新鮮に映りました。皆様にどう伝わっていくのかがとても楽しみです」

ーー 今シーズン、特に強く打ち出しているのはどんなジュエリーですか？

N 「フローライトとパズルリングです。フローライトは、モース硬度が低めでとてもデリケートな性質を持つ天然石なので、ジュエリーに加工するには難しさもあります。ですが、ひとつとして同じ色がないところが今シーズンのテーマと非常に親和性が高いものだと感じていたので、今回は水晶と張り合わせることで強度を保ちながら、よりフローライトの透明感を際立たせることができたと思います。パズルリングは、デフォルトがラブラドーライト、先行予約では誕生石12種の計13種からお好みの石をお選びいただき、カスタマイズできるように仕上げました　※先行予約は10/31で終了」

まずコンセプトありき。岡﨑真理子のデザイン哲学

ーー 改めて、Journal du eteの読者に岡﨑さんのことを知ってもらいたいと思います。主にどういったお仕事をされているんですか？

岡﨑 「現代美術の展覧会や演劇・コンテンポラリーダンスなどの宣伝美術、文芸誌『文学界』のデザインなど、文化関係のアートワークが主軸になります。それらに加えて、ファッション関連の依頼を都度いただいている状況です」

ーー デザインにおける考え方を伺いたいです。

岡﨑 「わたしはコンセプトからデザインを考えていくタイプの人間というか。例えば美術展だとキュレーター、個展なら作家さんの意図やコンセプトがありますよね。そこからどう発想を膨らませてビジュアルに翻訳するかという作業が性に合っているみたいです。なので、シーズンテーマや商品自体に明確なコンセプトがあるeteさんのビジュアル制作も、普段やっていることに近い感覚でご一緒できた気がします」

N 「そう言っていただけると嬉しいです」

岡﨑 「といっても、実は難しさもあったんですよ（笑）」

N 「そうだったんですか！ ぜひお聞きしたいです」

岡﨑 「わたしの普段している作業が、作家さんの作品ありきで編集的にデザインを起こしていくことだとしたら、今回は0からイメージを立ち上げていったので、そこに大きな違いがありました。あと、わたしと本田さん、フォトグラファーの村田啓さんとスタイリストの須貝朗子さんに加えて、ダンサーのハラサオリさんに身体の動きを付けてもらいつつモデルもやってもらったり、ヘアのNori Takabayashiさん、メイクのSuzukiさん、そしてモデルのSuzuneさんとSotaさん、動画のサウンドに小松千倫さん、他にも大勢の方々が関わって進めていきました。そのため異なる個性のすり合わせ方も、いつもとは違ったと思います。でも結果として、たくさんの才能が集結したことで、自分だけではとても作れないようなものが出来上がり、とても嬉しいです」

N 「岡﨑さんの“コンセプトからデザインを考える”ところでいうと、今回のビジュアルブックは全体的にフローライトのカラーをベースにしていただきましたね」

岡﨑 「はい。デザイン的にもそうですし、衣装もプロップも、須貝さんと相談しながら、淡いグリーンやブルー、パープル系の繊細なトーンを中心に拡張させていきました。それとキーワードのひとつにミラー（鏡）があったので、テーマとビジュアルをブリッジする存在として象徴的に扱っています。色や光を取り込んで反射したり拡散する鏡の性質だったり、姿を映すものだから自分を見つめ直す意味もあったり。日々を積み重ねていった先にいる自分は、いまの自分と違って見えて、アップデートされているはず。そんな意味をビジュアルに込めました」

制作を終え、心に残った一枚

ーー 納品されたばかりのビジュアルブックがテーブルの上にあります。どのカットがお気に入りですか？

岡﨑 「表紙のカットですね。実はこのカット、髪型を似せた男女のモデルなんです。鏡の奥に像が繋がっていく奥行きを強調するために、Noriさんのアイデアで白い糸を補助線のように入れています。鏡を前にしたときに気付く自分自身の成長や、変化していける可能性をうまく表せたのではないかと思っています」

N 「わたしのお気に入りはパズルリングのカットです。いままでのeteにはない表現を見てもらいたいという気持ちがあったので、きっといろんな人の目に留まるだろうなと期待しています。ほかにも、撮影現場で虫眼鏡を使ったカットなどもあって、とても興味深いビジュアルになっていると思います」

岡﨑 「最初は拡大鏡を使おうという話から、結局虫眼鏡になったカットですね（笑）。撮影用の衣装にはわたしの私物もいくつか入っていたり、デザイン要素として水彩のハンドペイントを取り入れたり、普段はあまりしないことにチャレンジできたのでとても面白いプロジェクトでした」

ーー 最後に、おふたりが思い描く理想の女性像を教えてください。

岡﨑 「さまざまな物事を柔軟に取り入れながら、自分のなかに芯を持つ女性は理想だなと思います。芯といっても、動かずズドンと縦に1本あるわけじゃありません（笑）。気分やムードをいつまでも楽しめる一方で、自分の中心を失わない人。eteのジュエリーは、そういった内面的なかっこよさを感じられる女性が身に着けると、より素敵に見えるんじゃないでしょうか」

N 「わたしも岡﨑さんと同じく、柔軟に生きながら芯を持ち続ける女性は素敵だと常々思っています。eteのジュエリーを身に着けることが、そういった女性のアップデートを後押しできるような役割を担えたら嬉しいです」