[ Interview ]
The Creative Spirit
デザイナーが語る、“クリエイションの源流にあるもの”
Interview&Text_Moe Nishiyama
Direction_Yuri Tanaka
Produce_Yohsuke Watanabe(IN FOCUS)
シンプルな美しさの中に遊び心を覗かせるete/ete bijouxのジュエリーはどのように生まれるのか。
色や形、質感や素材選び、世界観に至るまで。
これまであまり語られなかった創作の背景を、デザイナーにインタビュー。
インスピレーションは「日常」の些細な気づきから
コレクションごとに多様な世界観で表現されるete/ete bijouxのジュエリー。インスピレーションはどんなところから? アイデアが形になるまでにどのようなプロセスを踏んでいるのだろう。
「デザインの発想元になるものはそのテーマによって様々ですが、日々時流を感じながら、生活の中で目にしたものから『この動き新鮮だな、素敵だな』というものがあればジュエリーに落とし込むようにしています。ete bijouxの2023SSでいうと、リサイクルシルバー925の線材を用いた“Re-grow”コレクションは、日本古来の庭園様式のひとつでもある『枯山水』がインスピレーション源。デッドストックのパールを用いた“Limited Pearl”コレクションは、浜辺の砂や巻貝の形状から着想を得ています。今回は『attitude~身に着けるものは、態度~』というテーマから、素材選びの配慮と、製作工程の背景、大自然へオマージュを捧げるというのが、自分の中でのキーワードでした」
手描きのスケッチが完成したら、正面・側面・底面の三面図のデザイン画に落とし込む作業に。厚みや幅、石の大きさ、ツメの留め方など、コンマ1mmの指示を書き込んだものを、社内の3DCADオペレーターに平面図面から立体図面に起こしてもらい、隣で画面を見ながら細部のニュアンスまで調整。そこから3Dプリンターで『ワックス(ロウ)』を用いて、型となる模型を作成し、再度図面上でさらに修正を重ねていく。
「お洋服のつくられる工程と同じかもしれないのですが、細かい作業の繰り返しです。肌の上に身に着けるとても繊細なものなので、強度や安全面、着けやすさに配慮しながら、製作チームみんなでこだわりを大切にしながら創り上げていきます」
ミリ単位の光の粒から生まれた煌めき
数々のコレクションのなかでも、2014年の発売以来アイコンとして永く愛され続けているのが、今季リニューアルを果たした「e_Grain」コレクション。動くたびに光の粒が煌めく、そのデザインの要になっているのは、そろばんの珠のような形の地金パーツだ。
「この地金パーツは、もともとジュエリー自体の存在感をなくし、肌の上にきらきらとした光の粒を点在させるというコンセプトでつくられたもの。専用の機械によってひとつひとつ成形し、地金よりも硬度が高いダイヤモンドを用いた器具で切削加工を施すことで、鮮明な輝きが表現されています。加工自体は機械で行われますが、すべてが均一にはならないので、一粒ごとの煌めきを保つため、仕上げの組み立ては人の手で行われています。」
リニューアルする際に意識したのは地金パーツ(光の粒)の配置。一見するとわずかな変化だが、新作は等間隔の配置にすることでモダンな印象にアップデートしているという。
「パーツを1個飛ばしにしてカジュアルな印象、2個飛ばしにしてラグジュアリーな印象にするなど、地金パーツの配列や、密度を調整することで印象が大きく変わります。ete bijoux限定の新色ロウブラウンゴールドは、大地や木々のニュアンスを持つ、自然体で落ち着いた佇まいのニュアンスカラー。地金の配合を調整し、メーカーさんと何度も検証を重ねて実現したオリジナルカラーです」
すべての“e_Grain”コレクションはこちら
時代や価値観とともに変容していく
企画から世界観の構築、原型の製作……。時間をかけ、いくつもの工程を経て、熟練の技術とひとの手で製作されるete/ete bijouxのジュエリー。変化する時代や価値観とともに、永く愛されるものをつくるブランドであるために大切にしていることがある。
「ジュエリーは一人ひとりの人生に永く寄り添うもの。ジュエリーブランドとして、今の時代にどのような姿勢であるべきなのか。どうしたら地球環境に少しでも優しいジュエリーが作れるのか。自分たちにできることからより良いものづくりを目指すために、ete/ete bijouxでは、『For future』(未来のために)』というコンセプトのもと、環境問題を考えるきっかけをつくり、これからのジュエリーの在り方を見つめ、進化を続けています」
そんなコンセプトから生まれたコレクションの一つ、ete bijouxの“Re-grow”コレクションはアーバン(都市)とネイチャー(自然)の調和をテーマに製作したもの。デザインのみならず、素材選び、製作の工程まで試行錯誤が重ねられているという。
「素材にリサイクルシルバー925の線材を用いることで、製作過程で出る廃棄物が生まれにくい作り方に挑戦しています。天然石を用いた“Limited Stone”のリングは、すべて昔からお付き合いのある石屋さんのデッドストックから選ばせてもらったもの。デザインする際の素材選びから加工の工程も模索しながら、永く愛されるジュエリーを届けられるように。共に変容できるものづくりを目指して日々探求を続けています」